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本作品は、これぞマクズと一瞬に感じさせてくれる。しかも、そのことがアール・ヌーヴォ―を連想させると思われている。 本作品の製作年代は、その器銘が香山後期に使われていることから、明治37年頃~大正5年と確認できる。なお、香山は大正五年没。(「宮川香山釉下彩」を参照) 本作品藤文は典型的和文様である。磁器文様として江戸時代に確立している。それを釉下彩緑色と紫色という明治の釉下彩絵具で描いている。本作品のように緑地に釉下彩文様を描くことは香山の定番である。釉下彩技巧につき、香山は明治29年、早くて同28年までにそれを完成している。本作品は使用絵具からして後期時代の新たに開発した技術・技巧によるものでなく、それまでの集大成的作品と言える。本作品は藤文を大胆に描き、釉下彩釉地の緑色は明るい。しかし、その明るさは日本人の好んだ澁さと異なる。欧米的センスの色調である。同時代に製作された東京国立近代美術館所蔵かきつばた文釉下彩の色調と比べれば、欧米向けであることを示している。 藤文はラッパ形に開いた筒状の器形に描かれている。本作品だけでなく、工芸作品文様は器形に合わすのが基本である。本作品の藤文をアール・ヌーヴォ―と結びつけているのは短略的である。 なお、本作品器形は、欧米陶磁器スタイルである。江戸元禄時代頃、輸出伊万里でもよく用いられ、明治に新たに用いられたものではない。そこではコーヒーカップ・人形等さまざまなの物があり、香山作品よりバラエティーであり、圧倒的な数量が伝世している。 香山は明治に横浜で欧米用に窯を開き、釉下彩という明治の絵具で和文様の作品を製作した。本作品も欧米指向でもって華麗さを器形と共に表現した。香山を代表する大型作品である。
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